今回は、第三者後見人で元 OB でもある齋藤礼子さんに、成年後見人としての活動の中から日々感じたことを、日誌にしていただきました。
○月○日
N さん、私を見てすぐさま手招きをして自室へ案内。受任して 3 年目の頃から始まった慣例のシーン。スタッフ曰く「僕らにはしてもらえません。」と苦笑。OB の私も「現役の時、こんな姿を見たことない。」と述懐する。部屋に入ると早速外出で購入した物品を見せて、いくつかの言葉と共に嬉しそうに報告。ガイドボランティアさんに聞くと、いくつもの『言葉』を発せられるとのこと。面会日にお姉さんから伺うと、ここ 2 年程前からとのこと。また、あれ程拒否的であった理髪を自分で理髪店に行って出来るようになったとのこと。成人期の彼の驚くべき変化から多くのメッセージを受け取った。それは、人はいくつになっても豊かな人格発達を拡げてゆく存在なのだということ。そして人は、“Only one person for me”(自分の為のただ一人の人) の存在がどれだけ大切であるかということ。これは自画自賛ではなく、現役時代に、一人ひとりに寄り添った大切な心の交流をはたして為してきたのかと、OB として、懺悔の想いを抱いているからである。そして、当時スーパーバイズを受けていた大学教授に「一人に 1 日 10 分笑顔が生まれる関わりが出来たら、給料を貰っても良いと思いなさい。」と何度も助言された事を反省と共に思い出す。もちろん今の彼は、たくさんのスタッフに支えられている事に感謝しつつ、今日も N さんに会いに行く。
○月○日
Mさんに面会。同じユニットの S さんを「おーい、S さんおいで〜」と自室に呼ばれる。なんという驚き !! これまでは S さんに先に面会すると不機嫌になる彼女の為に、必ず彼女の面会を先にする様になって 2 年。同じ後見人との面会を一緒に過ごそうという訳である。過ぎ去りし現役の日々、人間関係において発達途上のもたつきによる M さんのいくつもの課題を知っているだけに、この豊かな人間性の発露に驚嘆する。そして、「また来る ? 」という言葉にやはり “Only one person for me” を今更ながら思い知らされるのである。思えば、集団参加が苦手で、乗り越え辛い発達の壁を越えるのに悪戦苦闘していた彼女に、現役の頃のスタッフで始めた自己実現的役割としての『お手伝い活動』を得意そうに継続しておられ、たくましく誇り高い表情で成年期の今を活き活きと生きている姿に、又々感動しながら M さんにバイバイする。ここでも、細やかな配慮を下さっているスタッフに感謝である。

○月○日
Yさんに面会。「歯医者に行ったで〜。」と治療中の口腔内を得意気に見せて下さる。聞くと、レントゲン検査も出来たとのこと。怖がりで気の小さい彼は私が現役の頃、医者通いが大の苦手であった。そんなデリケートな神経で友達とのトラブルも多かった。その彼が近頃、柔軟な心とたくましさを獲得しつつ成年期を誇り高く生き始めておられる。彼にもお馴染みのガイドボランティアさんと希望メニューによる毎月のお出かけ体験がある。その喜びは如何ばかりか。『要求こそが発達を促す芽である。』と学生時代に学んだが、OB になり後見人として会う様になって改めて気づく深い深い鉄則である。彼もまた、日々『お手伝い活動』をする中でスタッフの皆さんから、激励と賞賛のメッセージを頂きエネルギーをもらって今日を歩んでおられるのである。毎月面会に行くのが楽しみである。

○月○日
今日は第三者後見人 3 人、被後見人 7 人、ガイドボランティア 6 人で出掛ける年に 1 度の温泉日帰り旅行。これは前任者からのたってのお願いによって続けている行事である。後見人とのふれあいの意味合いもあるが、何といってもガイドボランティアさんと本人との温もりあるふれあいと関係の深さに目を見張るばかりである。一人ひとりがどれだけ “Only one person for me” の存在を欲しているかと思い至るシーンである。
○月○日
担当者会議の日。市町村の計画相談支援が始まり、本人の代弁者として出席。前もって送って下さった用紙に本人の願いや、推測できることがらを伝えてある。その内容に基づいて、話し合いがされ、支援計画が立てられるのである。本人支援に代弁者として第三者の視点が加わる事の大切さ、そこに関わることが出来る事を OB としても嬉しく思う。
福祉理念の大転換が図られた 2000 年に成年後見制度が始まり、清風園でも今日、成年後見の選任が 100 %となったとのこと。それを支えられたスタッフに感謝したい。財産管理と身上監護の 2 つの任務をしながら本人支援をしている私達後見人もあらためて、一人ひとりの方の人生が実り多い心豊かなものであるよう、代弁者としての役割を心して果たしていきたいと思う日々である。
記 : 成年後見人 齋藤 礼子
清風園としましても、成年後見の選任が 100 %となった機会に、この制度の意味をあらためて学ぶ事ができました。我々スタッフも今後とも “Only one person for me” の存在を大切にし、(自らも時にはその存在になりながら) 利用者の方々の心に寄り添う関係で共に支え合っていきたいと思います。
島根県社会福祉事業団